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 古代ギリシア・ローマ美術の原点を探る:クレタ・ミュケナイ美術から幾何学様式まで

2025.5.12

中級
西洋美術史

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目次

はじめに:ギリシア・ローマ美術の起点をどこに置くか

古代ギリシア・ローマ美術を概観する際、最初に問われるのは「どこから始まり、どこで終わるのか」という美術史の枠組みです。本記事では、ギリシア美術の源流としてクレタ(ミノス)美術とミュケナイ美術を起点とし、最初の様式美術である幾何学様式までを中心に取り上げます。

1.クレタ美術(ミノス美術):自由な自然主義の世界

紀元前3000年紀中頃から始まるクレタ美術は、エーゲ海のクノッソス宮殿を中心に発展し、海洋的で自然主義的な表現が特徴です。

旧宮殿時代(中期前2000〜1700頃)には、カマレス陶器と呼ばれる華やかな土器が現れ、農業と貿易によって栄えたクレタ文化の象徴となりました。
地震によって一度壊滅したものの、新宮殿時代(前1700〜1400頃)には芸術的絶頂期を迎えます。

代表作:「百合の壁画(スプリング・フレスコ)」

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明るい色彩と自然な曲線が春の息吹を感じさせる傑作で、テラ島(サントリーニ)から発見されました。
出典:Wikimedia Commons | Akrotiri, Spring Fresco

2.ミュケナイ美術:秩序と構築性の始まり

クレタの自然主義的な芸術に対し、ミュケナイ美術(前1600〜1100年頃)は堅牢な建築と形式的な構成を特色とします。

ミュケナイ建築は、巨大な石材で造られた城塞都市とメガロン様式(長方形)の王宮が特徴。ギリシア建築の原型とも言える構造性がここに見られます。

代表作:「獅子門」

ミュケナイ城塞の入口であり、重厚な構築性と宗教的象徴性が融合した傑作。
出典:Wikimedia Commons | Lion Gate, Mycenae

また、ミュケナイの陶器は、クレタの自由なデザインから抽象化・簡素化の方向へ進化し、後の幾何学装飾への布石となりました。

3. 幾何学様式美術:構築的様式への転換

紀元前11世紀ごろから、ミュケナイ美術の終焉とともに登場するのが幾何学様式です。アテネのケラメイコスで多く出土しており、器面を直線や帯で区切る構成が特徴です。

  • 波状線、ジグザグ、同心円といった図形が器表に配置され、構築性と秩序が重視されました。
  • これは人間や動物の写実から抽象性へという変化でもあり、後の古典ギリシア彫刻への序章といえる様式です。

出典:Wikimedia Commons | Geometric Style Krater, Louvre

まとめ:古代美術の流れとその後への影響

クレタからミュケナイ、そして幾何学様式への移行は、自然から秩序へ、自由から構築へというギリシア美術の根源的な発展を物語っています。

この変遷の中に、後の古典ギリシア彫刻や建築が生まれる土壌が育まれており、西洋美術史の基礎が形成されていくのです。

図版ギャラリー

作品名説明出典
百合の壁画(Akrotiri)テラ島に咲く百合を描いた壁画Wikimedia
獅子門(ミュケナイ)城塞入口に設けられた象徴的彫刻Wikimedia
幾何学様式の壺(Krater)幾何学的構成が強調された装飾陶器Wikimedia

参考リンク・使用ライセンス

  • Wikimedia Commons(全画像)
    ライセンス:パブリックドメイン(出典元に記載あり)
  • 出典書籍・資料
    • 『西洋美術史入門』美術出版社
    • 『カラー版 西洋美術史』美術出版社
    • 『古代ギリシア美術の世界』山川出版社
    • Louvre Museum Collection: https://collections.louvre.fr

最後に

いかがでしたでしょうか?今回の記事でよりアートをより深く知っていただけたら幸いです。
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執筆者はこの人!

保護猫のキキ

おだやか

美術大学にて油絵、インスタレーションを学び、プラスアートギャラリーにて勤務、展示運営などに携わる。
アートと猫が好き。

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