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『佐藤雅彦展』展示会レポート:作り方を作るを体験する思考の冒険

2025.7.15

初級
展覧会レポート

プラスアートのコラムについて
プラスアートのコラムでは、アートをもっと身近に感じてもらえるような記事をお届けしています。季節ごとにおすすめの作家を紹介したり、アート初心者の方にもわかりやすく解説したりと、アートの魅力を多角的に発信。日常の中に自然とアートが寄り添うような、そんなヒントを見つけていただけるような内容を目指しています。ぜひ、アートの世界を気軽に楽しんでください。

目次

はじめに:展覧会「佐藤雅彦展」に行ってきました!

CM、映像、教育番組、ゲーム、インスタレーション…ジャンルを超えて数々の印象的なコンテンツを生み出してきた佐藤雅彦。その創作の「作り方」自体をテーマにした展覧会が、横浜美術館のリニューアルオープン記念として開催中です。
この展覧会のテーマはズバリ、「作り方を作る」
佐藤雅彦の頭の中でどのようにアイデアが生まれ、どうロジックとして形になっていくのか
――作品の裏側=思考のプロセスが、さまざまな体験型の展示で楽しめる構成になっています。

実際に足を運んできたので、展示の概要や見どころ、個人的な注目ポイントを交えながらレポートしていきます!

1.展示概要:「作り方を作る」を体験する

本展はまず「アイデアが形になるまで」を体験できる構成がユニークです。
佐藤雅彦が40年にわたって手がけた代表作—「ピタゴラスイッチ」「だんご3兄弟」「スコーン」「モルツ」「ポリンキー」「バザールでござーる」「I.Q Intelligent Qube」「0655/2355」など—の数々が一堂に会しています。

その横には、これら作品がどう生み出されたのか、“思考のプロセス”が展示されており、「作り方の作り方」を目で見て追体験できます。

2. 展示内容:体験型インスタレーションの数々

会場には、佐藤雅彦が関わってきた多彩な作品が集結しています。CM、教育番組、キャッチコピー、映像インスタレーションなど、ジャンルを超えたコンテンツの数々が紹介されていますが、この展覧会の本質は、それらが「どのように生まれたか」にあります。

■ 思考が見えるコンテンツ展示

それぞれの作品には、発案の背景や構想段階の思考の軌跡、それらをまとめた解説文など、“作り方の過程”が丁寧に添えられており、観るだけでなく「考え方を感じる」ことができます。作品の裏側にある論理やアイデアの流れをたどることで、視点が拡張されるような感覚が味わえるでしょう。

■ 実物展示:「ピタゴラスイッチ」の仕掛けに出会う

NHKの人気番組「ピタゴラスイッチ」で使用された装置の実物が展示されており、その精巧な構造を間近で体験できます。映像とあわせて観ることで、あの“最後の旗が立つ”瞬間の舞台裏まで深く理解できる、子どもも大人もワクワクする展示です。

■ 研究と創作の現場:佐藤雅彦研究室とユーフラテス

大学教育の中での試行錯誤や研究成果も、本展の大きな見どころのひとつ。佐藤雅彦が主宰する研究室や、そこから生まれたクリエイティブ集団「ユーフラテス」による作品が紹介されており、教育と表現、デザインと論理が融合した実験的なプロセスを垣間見ることができます。

3. 見どころピックアップ

◆ 「体験型展示」の豊富さ

「見る」ではなく、「考える」「感じる」「試す」展示が充実。子どもから大人まで刺激的な体験が広がります。

例えば、『計算の庭』という展示。
ここでは、来場者自身が数字のカードを持って“庭”に入り、庭の中に設置された「計算ゲート」を通るたびに数字が変化していきます。参加者は暗算をしながら、最終的に「73」になるようにルートを選んでいくのです。
まるで自分自身が「数字」になったかのように、抽象的だった“計算”という行為を身体感覚として体験できる――そんなユニークな展示です。

◆ 「作り方の作り方」がわかる楽しさ

CMや装置、映像コンテンツが、どんな意図や発想から生まれてきたのか。
その思考のプロセスが丁寧に可視化されており、単なる作品鑑賞では得られない「見方」の変化と洞察が得られます。

◆ グッズ販売も必見!―「思考のかけら」を持ち帰ろう

展示の余韻をそのまま自宅に持ち帰れる、ユニークなグッズも充実しています。

たとえば、NHK「ピタゴラスイッチ」でおなじみの“最後に音が鳴るあの仕掛け”を再現したミニチュア装置や、番組の名物アイテムをモチーフにした『ピタゴラもじもじFlag』など、番組ファンにはたまらないアイテムが揃います。

なかでも注目なのが、本展のために制作された特製図録です。
一般的な美術展の図録が作品図版と解説を中心に構成されているのに対し、本図録は圧倒的な文章量が特徴。
作品やコンテンツがどのような思考から生まれ、どんなプロセスを経て完成に至ったのか、その「作り方の作り方」が丁寧に綴られており、まさに“読む図録”といえる仕上がりです。

思考をデザインする佐藤雅彦ならではの視点が詰まったグッズは、見て・触れて・考えた体験を、日常の中でもふと再発見させてくれるはずです。

4.実際に行ってみた感想

混雑状況

平日でも動画シアターなどは待ち時間あります。事前のオンライン日時指定がおすすめです 。

平日の昼間の様子・映像を鑑賞する展示に関しては少し待ち時間があった。

所要時間

ざっと回って2時間、すべてじっくり観るなら4時間ほどが理想。写真撮影OKな展示も多くあり、撮影禁止エリアも明示されています。

全体の印象

佐藤雅彦の名前を知らなくても馴染み深い作品が並び、その創作への思考に改めて驚きます。子どもも大人も楽しめる、クリエイティブ思考の宝庫です。
駅からのアクセスも良く、館内はリニューアル後に広々した印象。併設カフェやショップも充実していて、夏休みのお出かけにもぴったりです。

まとめ:思考を楽しむ展示体験へ

佐藤雅彦展は、作品を見る展示ではなく、思考に触れる展示です。
佐藤雅彦の「作り方」をたどりながら、自分の中にも「アイデアの芽」が育っていくような、特別な体験ができます。
展示を見終わったあと、あなたはきっと身の回りの世界を、ちょっと違う目線で見るようになるでしょう。
ぜひ現地で、「作り方の作り方」を体感してみてください!

📍 開催情報

  • 展覧会名
    • 「横浜美術館リニューアルオープン記念展
      佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」
  • 会場
    • 横浜美術館(横浜・みなとみらい駅)
  • 開催期間
    • 2025年6月28日[土]-11月3日[月・祝]
      ※木曜日休館
  • 式サイトはこちら

最後に

いかがでしたでしょうか?今回の記事でよりアートを身近に感じることができたら幸いです。
プラスアートは、「アートを楽しむ」をコンセプトに、展示企画・運営やオンラインショップでの販売など、現代アートをさらに楽しむサービスを提供しています。
才能あふれる若手作家を中心に、個性豊かな作品を厳選してご紹介!絵画をはじめとする多様なアート作品を取り揃え、初めてアートを購入する方でも安心してご利用いただけます。
また、作品の魅力をより深く知っていただくために、アーティストインタビューやアートの飾り方、購入のポイントなど、役立つ情報をコラムで発信しています。
アートが日常に溶け込み、暮らしを豊かに彩るきっかけになれば幸いです。

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執筆者はこの人!

保護猫のキキ

おだやか

美術大学にて油絵、インスタレーションを学び、プラスアートギャラリーにて勤務、展示運営などに携わる。
アートと猫が好き。

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