プラスアートのコラムについて
プラスアートのコラムでは、アートをもっと身近に感じてもらえるような記事をお届けしています。季節ごとにおすすめの作家を紹介したり、アート初心者の方にもわかりやすく解説したりと、アートの魅力を多角的に発信。日常の中に自然とアートが寄り添うような、そんなヒントを見つけていただけるような内容を目指しています。ぜひ、アートの世界を気軽に楽しんでください。
目次
はじめに
東京藝術大学の卒業・修了作品展に行ってきました。
卒業・修了作品展とは、学部・大学院の最終年に在籍する学生が、それぞれの専攻で制作した集大成を発表する公式展覧会です。分野やテーマはあえて統一されておらず、多様な表現が同時に並ぶことで、現在の美術がどんな思考や関心を内包しているのかを、そのまま体感できる場になっています。

1. 卒業・修了作品展の魅力
卒業・修了作品展の魅力は、アートに詳しいかどうかを、ほとんど問われないところにあります。
会場に並ぶ作品の多くは、制作意図や背景が細かく説明されているわけではありません。
だからこそ、知識や前提がなくても、ただ「見て」「気になる」「立ち止まる」という体験から鑑賞が始まります。
さらに、この展示では、日本画や油絵といった平面作品に加え、彫刻、工芸、デザイン、建築、など、分野の異なる作品が学内全体に展示されています。
一度で見切れないほどの作品を鑑賞できるのも大きな魅力のひとつです。

美術館やギャラリーでは、作品の解説や評価、作家の経歴を読んでから「どう理解するか」を考える場面も少なくありません。
一方、卒業・修了作品展では、そうした情報が鑑賞の前提になっていないため、ジャンルの違いを意識しすぎることなく、自分の感覚を起点に作品と向き合いやすいと感じました。
卒業・修了作品展は、アートを評価する場所というより、自分が何に反応するのかを知る場所なのかもしれません。
2. 印象に残った作品たち
藤本春華:『ぐるめ金工器物シリーズ』





表面に塗装を施すのではなく、金属を化学反応によって発色させる伝統的な技法が使われています。
狙った色を出すこと自体が非常に難しい技法であることを知ると、作品の見え方が一段変わってきます。
Instagram: @haruka__7216
◆ 小﨑拓郎:『沼』

生き物や自然を主なテーマとし、純粋な生命の美しさや、それらを取り巻く環境へのまなざしを軸に制作されています。
また、日々の生活の中で感じた思考や、人間のあり方そのものをモチーフに重ね合わせることで、作品として立ち上げています。
Instagram: @ozaki807
◆ 藤村栞:『はなことば』


淡く重ねられた色彩と繊細な描写が、画面全体に静かな時間を流しているような作品。
人物と背景が溶け合うように描かれ、はっきりとした輪郭を持たない分、見る側は自然と距離を詰め、表情や気配に意識を向けさせられます。
Instagram: @_shiori_art_
◆ 菅野湧己:『記憶されなかった記憶-30日間』



何気なく手に取ったもの、すでに使い終えたもの。
そうした日用品に残るわずかな痕跡を、一針ずつ刺繍するという行為が、記録されないはずだった時間を留めているように感じました。
日常の外側ではなく、日常そのものに向けられたまなざしが印象的です。
Instagram: @wakumiiii
◆ 馬淵明日香:『万祝から御宿へ』


細かな石片を積み重ねて構成された画面は、遠くから見ると一つの風景として立ち上がり、近づくにつれて素材の重なりや手仕事の痕跡が現れてきます。
石という重く動かない素材を用いながら、時間や物語の流れまで感じさせる点が印象的でした。
Instagram: @mabuchiasuka_
◆三成 花奈:『安寧』



写実的で生々しい表現が、鑑賞者との間にほどよい緊張を生み出している作品。
安心して眺めるというよりも、思わず身構えて見てしまうような感覚が残ります。
Instagram: @mitsunari_kana
◆石坂莉帆:『Who Made This Past ? 編集された”私”』


最初は楽しく眺めていたのに、見ているうちに少し落ち着かない気持ちになる作品。
身の回りにあふれる情報やイメージが、自分自身の記憶や感覚と重なってくるように感じられました。
Instagram: @haaveg116
3.卒業・修了作品展ならではの鑑賞
卒業・修了作品展は、見る順番が決まっていない
卒業・修了作品展を見ていて特徴的だと感じたのは、鑑賞の順番がほとんど決められていないことです。
美術館では、展示構成や動線によって「この順で見ること」が暗黙のうちに用意されていることが多くあります。
一方、卒業・修了作品展では、どこから見始めてもよく、途中で引き返しても問題ありません。
そのため、気になる場所にふらっと入ったり、途中で別の展示に寄り道したりと、鑑賞のリズムを自分で作ることができます。
まとめ
卒業・修了作品展は「未来を当てる場」ではない
卒業・修了作品展は、「誰が将来有名になるのか」を見つける場ではありません。
むしろ、今、どんな思考があり、どんな表現が生まれているのかを、見るための場だと感じました。
評価や結果を先に想像するのではなく、作品と自分なりに向き合えることが、この展示の大きな特徴です。
だからこそ、アートに詳しくなくても構わない。
分からないまま立ち止まったり、言葉にできない違和感を持ち帰ったりすること自体が、自然な鑑賞体験になります。
卒業・修了作品展は、未来を予測する場所ではなく、「いま」を感じるための展示なのだと思います。
最後に
いかがでしたでしょうか?今回の記事でよりアートを身近に感じることができたら幸いです。
プラスアートは、「アートを楽しむ」をコンセプトに、展示企画・運営やオンラインショップでの販売など、現代アートをさらに楽しむサービスを提供しています。
才能あふれる若手作家を中心に、個性豊かな作品を厳選してご紹介!絵画をはじめとする多様なアート作品を取り揃え、初めてアートを購入する方でも安心してご利用いただけます。
また、作品の魅力をより深く知っていただくために、アーティストインタビューやアートの飾り方、購入のポイントなど、役立つ情報をコラムで発信しています。
アートが日常に溶け込み、暮らしを豊かに彩るきっかけになれば幸いです。
あなたの空間に、アートをプラスしてみませんか?
▶ 公式サイト:プラスアート
▶ONLINE SHOP